【ルーツvol.1】職業:ライター 涌井亜希子

By | 2016年8月5日

IMGP0377m
リクルートの結婚情報誌「ゼクシィ」のフロアで、
わたしが制作ディレクター、彼女がライターとしてともに仕事をしていたのが
いまから約10年ちょっと前。
発注した文章はリライトも新規原稿も、常に期待以上のクオリティで、
いつも安心してライティングを発注していたライターさんのひとりでした。
そんな彼女が昨年「ダジャレ弁当」の作者として、ネット上で注目を浴びました。

「この100人インタビュー企画「ルーツ」はこの人からはじめよう」

勝手ながら心に決めさせていただいた次第です(笑。
ライターとしての想い、母としての想い、
涌井さんの飾らない本音をインタビュアー松本がお聞きしました。

書くことそのものより、
パズルのように文字を
「ハメる」のが好き。

IMGP0375m
・松本
もともとライターになりたかったの?

・涌井
ううん、わたしはもともと…あの、恥ずかしいお話なんですけど、
しゃべる仕事がしたくって…。

・松本
あ、でも、思い出した。昔飲み屋で言ってた気がする(笑。

・涌井
放送系の学科に進学して、そこでマスコミの勉強をしてるうちに
しゃべるより作る方が面白いな、と思ったんですよね。
テレビの仕事とか、制作の仕事がしたいな、と。
それで学生の時に、素人出演番組みたいなのとか、観覧とか、
就職活動を兼ねて、いろんなところに応募して、
クイズ番組にも出たりとかしてたんです。

・松本
へえー。
アクティブな女子大生(笑

・涌井
そうそう(笑)。
で、4回生の時に「女子大生卒業旅行ツアー」みたいな番組の企画があってね、
縁あって出演することになったんです。
それをきっかけに、念願だったテレビ番組の制作会社に就職して、
情報番組のADを2年間やってました。
その時、ロケ台本やナレーション原稿も書いていたんですけど、
当時から文章書くことに対しては、あんまり抵抗が無かったなあ。
昔から文章書くは得意なほうだったと思うし、読書も好きだったし。
ほんま「本の虫」みたいな子でしたから。

・松本
そうなのね。

・涌井
中学生、高校生、大学生のころなんかは結構読んでました。
いまは全然ですけどね。

・松本
母は時間が無いよね。

・涌井
ね。むしろ活字見たくない・・・。
(両笑)

・ 松本
でもしゃべるより「作る方」が面白いなと思って、
ライターの仕事を始めた訳よね?
つまり、たまたま作ったものが文章だった。
フツーは、「本がすごく好き」でとか、「書くのが好きで」とか、
そもそも文章に関することを生業にしたいからライターになった、
っていう人のほうが多い気がするんだけど、実は私、そうじゃないんだ。
書くことが好きでライターになった訳じゃない。

涌井さんも「文章が好き」ではあるんだけれど、
今の話を聞いているともしかしたら、なんというか
仕事の「ツボ」はそこじゃないような・・・。違う?

・涌井
そうです、そうです。違う。

・松本
やっぱり?ライターの仕事のどこが「ツボ」だった?
「これが面白いからやってる」みたいな部分。あるよね、きっと。

・涌井
あのねぇー。。。
なんかこう、パズルのピースを組み合わせていって、
はまったー!みたいな、その気持ちよさかな?

・松本
おー。なるほど。

・涌井
商業広告ではない方面のライターさんは、
なんというか…けっこう自分の主観だったりとか、世界観とかあって。
文章のテイストとかもかなり個性的だったりとかする気がしていて…。

・松本
自分の「作品」であることを意識してる、って感じかな・・・?

・涌井
うん。でも私は、きっとそういう文章は書けないんですよ、たぶん。
商業広告の文章って、
「あるものをつなぎ合わせて作る」みたいなところ、あるじゃないですか。
元々、クライアントが持っている素材とかがあって、
その素材を組み合わせて作るでしょ?これで、何字以内で書いてくださいって。
その決められた条件の中でこなすのが、たぶん楽しいんだと思う。

・松本
なるほどね!そういうパズル感!

・涌井
組み合わせていって、まとめる感じ。
一行分くらいしかない素材をきちんと育てて、「わ♪はまった」みたいな・・・。

・松本
じゃあさ、きっちり文字数そろえて、
かちっとこのレイアウトにハマるように書いてっていうオーダー、けっこう好き?

・涌井
うんうん、好き好き。

・松本
なるほどね。ちなみに私は苦手・・・・(笑
だから昔、私と一緒に働いてた結婚情報誌の仕事も面白かった…?

・涌井
うん、向いてたと思います。
ディレクターさんや営業さん、個々のオーダーに合わせて、
黙々と書き上げていく作業は性に合ってました。
そのかわり、わたしは取材力があんまり無くって…。
瞬発力があんまり無いんです。

・松本
ほー。瞬発力。 取材って、瞬発力か・・・

・涌井
瞬発力だと思いますよ。
「あー、あそこであれ聞けばよかった」「これ聞けばよかった」みたいに
あとで後悔してしまう。だから取材はあんまり得意じゃなくて。

・松本
うんうん。

・涌井
それと「とんがった感じ」も多分出来ない、いわゆる「自分の個性を出す!」みたいな。
「新しい企画を!」とか言われても、ベタなものしか思い浮かばないし(笑)
ある意味、コマとして使ってもらったほうが
私は良い仕事させてもらえると思う。
自分で先頭きってやっていくっていうタイプではないんです。

・松本
でもさあ、演劇ずっとやってたでしょう?
あれって、モロ創作活動じゃないですか。
私にはああいうセンスは絶対なくってね、
演劇の世界の人たちをみているとこう、とんがるというか、
自分たちで、発信していくというか、
そういうことが好きな人なのかなあと思ってたけど、そうでもないの?

・涌井
演劇もね、私は演出やってた訳じゃなくて、ひとりのコマとして動いてただけで。
面白い本を作って演出する人は別にいたんです。

・松本
なるほどね。

・涌井
どちらかというと受け身なんですよ。
だけどね、その方が自分らしく仕事が出来るっていうのも分かってる。。

・松本
なるほどね。自分が一番得意なスタイルを分かってるっていいね。

次男が生まれてからは、
自分のために、子どものために
「ライスワーク」を選んだ。

IMGP0383m
・松本
子どもが生まれてから、仕事への考え方って何か変わったと思う?

・涌井
うーん、ちょっと仕事への考え方に対する変化、とは違うかもしれないんだけど、
怒りやすくなったかなあ。
子どもに対してだけじゃなくて、何に対しても。
それって結構、自分でもしんどいなあーって

・松本
時間に余裕がないから?かな。

・涌井
うーん。それもある、かな。
でも旦那とふたりで共働きの生活で、
ここに子どもが出来たら時間がなくなる、ってのは
最初から分かってて産んでるしね。

・松本
まあね。
時間もなくてバタバタしている状態で、
仕事の価値観とか、将来何したい?とか、夢とか、聞かれたって、
「いやいま目の前で2人泣いてるし・・」みたいに、
現実と向き合わざるを得ない。
結局、仕事に対する向き合い方を変えざるを得ない、って感じかな?

・涌井
うん、でもほんまにそう。
こないだ昔から仲の良いママさん会った時にね、
彼女が言ってた言葉が印象にのこってて。

「今やってるわたしの仕事は、ライスワークだから」って。
つまり、ごはん食べるための仕事をやってるんだ、と。
彼女は割り切ってた。

・松本
なるほどー。

・涌井
実は今、フリーのライター業は、ほぼお休みしている状態なんです。
というのも、次男を出産後、
最短で保育園に預けるつもりだったのが、
まさかの待機児童になってしまって、
ライター業をセーブしながら子育てしているうちに、
どんどん仕事が減ってきてしまって…。

次の春にはなにがなんでも認可保育園に入れねば!
収入も安定させねば!
というのもあって、
結局次男を無認可保育園に預けながら、会社勤めを始めることにしたんです。

もちろん、ライター業も可能な限り、
並行してやっていきたいという想いはあります。
でも、仕事の依頼があって、時間に余裕があれば引き受けるという、
消極的なスタイルなのが現状です。

今の職場は子どもとの生活を考えて、
勤務時間優先で選んだ仕事、
書籍の編集補助という文章を扱う現場ではあるけれど、
私が担当している仕事に関しては、クリエイティブな要素はほとんどありません。

ライターの仕事は、確かにクリエイティブだったかもしれないけど、
締め切りに追われる仕事だったし、
子ども見ながらってなると、キツい部分もあったりして。
5時になったらきっちりリセットできるような仕事の方が、
むしろ今の私にはいいな、と。

・松本
なるほどね。

・涌井
でもね、今の仕事始めて1年半くらい経つんですけど、
ちょっと物足りないのは、物足りない・・・(笑)

・松本
なるほどね

・涌井
ただ、ストレスはないし、焦りも感じもない。
対お客さんに対して神経をすり減らすこともまずないし。
会社もいろいろ融通きかせてくれて、すごくありがたい。
仕事も楽しくないわけじゃないんだけど、
なんだろう…、フリーでライターやってたときの
「快感」みたいなのは少ないのかな。

・松本
うんうん。どこを取るかよね、結局。

稼げないという
「ストレス」の代わりに
「余裕」を抱えるようにした

IMGP0348m
・涌井
出産前と比べて自由に動けない、
つまり「稼げない」っていう
ジレンマというか、ストレスみたいなのは
出産後、大きくなったかなあ。

子どもを産む前だったら、「あ、今月収入少ない、じゃあもっと働いたらいいわ」
ってシンプルに判断して動けた。
それこそ、ライターだけの仕事じゃなくても、
別に土日でもなんでも、短期バイトでも、
どっかお店手伝うでも、働こうと思ったら働けたでしょ?

それが今は出来ない。
子どもありきだし、いろんなことが決められてて、この時間しか無理。

もちろんその時間丸々使えるかって言ったら、
急な子どもの通院だったり、熱が出たりとかで
必ずとは言えない。

・松本
うんうん。

・涌井
「稼げない」、この現実自体がもうしんどい。

・松本
稼ぎたい、でも今は、子どもが小さいから、
「ライスワーク」しながら、生活を優先していきたい、んだよね?

・涌井
今はそうせざるを得ない状況かなあと思ってる。
もちろん、ライターとして第一線に戻りたいと思ったその時に
需要があるのか、ついていけるのか・・・っていう
不安もなくはない。

・松本
そうねー。
でもさっき言ってたように、
パズルのピースを組み合わせていくような作業が
快感だし、そこがツボなんだったら、
ライターじゃなくても、「ライスワーク」と割り切らずに
涌井さんを満たしてくれる仕事はありそうよね?

・涌井
うん、そうね。
ライターに固執して
「稼げない」「思うように動けない」ってストレス感じるより、
もう今は、もう出来ることしかできません、って
はっきり主張するようにしてる。

昔は、自分の実力が足り無くても、
頑張って「出来ます!」って言うとか、
仕事に対して背伸びしている部分はあったけど、
それはそれだけ頑張る時間があったから。
得意じゃないものも引き受けて挑戦してたし。

でも今は違う。(子どもたちの人生を)引き受けている立場だからね。

・松本
そんな風に仕事のスタンスを切り替えたのって、
なにかキッカケがあった?

・涌井
大きなキッカケはないけど、単にしんどくなったからです。

・松本
そっか。

・涌井
私、バリバリ仕事してた時から
スケジュールを細かく決めたいタイプだったの。
これをいつまでに仕上げて、いつ出して、
いつぐらいに返事をもらって、それもまさしくピースをはめていく感じで・・・

・松本
あーー、なるほど。

・涌井

友達との約束とかも、この日はここに行くから、
このそばに住んでる友達とかにも連絡して、
この間の時間に会うて、とか。
ぎっちぎちにスケジュールを、もう入れたくてたまらんタイプやったのね。
淋しがりっていうのもあったけど。(笑

・松本
はいはい。

・涌井
それがもう、子どもがおったら、すべてのスケジュールが不確定。
予定立てようが何しようが、おじゃんになること多々。
ほんなら、もうええわ!って(笑)

・松本
あーー。そこ、自分の元々のペース貫こうと思ったら
すごいストレスになるね。
しかも涌井さんが、きっちりはめたい派、となれば尚更・・。

・涌井
うん、すごいストレス。思い通りにいかへん感じのストレス。

・松本
だからむしろ、本来自分がやりたいことは、
ちょっと一旦置いとくのが、
ストレスをためないコツなんだ?

・涌井
そう。無理してめっちゃ仕事入れて、
特にあんまり得意じゃないような仕事を引き受けて。
結果的に子どもに「はよ寝てー」ってイライラするくらいやったら
やめとこう、っていう判断
もちろん、仕事したいっていう気持ちはあるけど、
やっぱり出来る範囲じゃないと「余裕」が無くなる。

・松本
なるほど。

・涌井
ま、いうても(子どもは)愛おしいんでねー。
彼らのためにも余裕を持っていたい。

・松本
かわいいもんねー(笑。

「お母さん、将来アイドルになって」
と息子に言われてハッとした、
私にも将来があるんだな、と。

IMGP0368m
・松本
これから何かしてみたいことってある?
まあ、何年先でもいいけど。

・涌井
私、息子にね、
「お母さん、将来、アイドルになって。」って言われて、ちょっと前に。

・松本
ほう!

・涌井
「アイドルになるんやったら、まずライザップ行かなあかんなっ。」って
息子が真剣に・・・。
(両笑)

で、その場は笑って終ったんだけど、
「将来」っていう言葉に、
あ、そうか、40歳過ぎた私にも
まだ将来あるんだ、って。ちょっとハッとして。

・松本
おーー。

・涌井
それから私将来、何しよう?何してるんだろう?ってずっと考えてるんだけど…、
実はまだ確実にはなんにも見えてこない・・・
(両笑)

・松本
なるほどなあ。

・涌井
夢って・・夢ってなんだ・・・みたいな?

・松本
わかる、わかる。

・涌井
新しいことをするエネルギーって、すごいやっぱり要るしね。

・松本
要るねえ。

・涌井
うちは家庭の事情で、共働きでないと生活が出来ないから、
私が止まるわけにはいかない。
だからライスワークだろうが、余裕を持ちつつだろうが、
なんだろうが働くのは働くんだけど、
いざ「将来のために」って考えると難しい。
たとえば何かの勉強をする、資格を取るとしても、
働きながらじゃないと無理だし。
かといって働きながら勉強出来るって、
そんな生半可なことじゃ、難しいんじゃないか、とも思う。
しかも、好きじゃないと続かへんやろうなあ、とも思ったり。
もう、悩みまくりで、どうしよう??(笑)

・松本
迷うよなあ。

・涌井
息子に言われたことがキッカケで
まだ、自分には可能性があるのかなあ、とか思いつつ、
何が出来んねやろう、って、ずっと考えてます。

一度止まったから動きだせない、
そんなお母さんたちって
きっと多い

IMGP0371m
・松本
でも、絶対同じように考えてるお母さん、
きっといるよねーって、今聞いてて思った。

・涌井
みんな多分その仕事のこと、自分の未来のこと、悩んでる。
正社員でずっときてね、産休育休を取って、
またそこに戻って活躍できてる人は別かもしれないですけど、
いっぺん子どもを産む、育てる、っていうところで
いったん止まってしまった人って、
次行くにも行かれへん感じだと思うんですね。

・松本
そっかあ。

・涌井
結局それで手軽な仕事とかを選んで、
でもずっとは続けられへんから、どうしよう・・・って言ってる間に
子どもが一年生とかになって、
学童預けるか、家でみるかみたいな話になって、
あぁじゃあ、パートの時間をちょっと減らそう・・・みたいになってたら、
「あれ?私の将来どうしよう…」ってなるんやろうなあって。

・松本
なるほどなあ。

・涌井
私はたまたまフリーのライターで、
「いっぺん立ち止まると仕事が止まってしまって、
次戻って来れないかも!」って思ってたから、
ずっと子どもを0歳から預けて、働いて来たけど、そうじゃない人もたくさんいる。
私も実際家計に余裕があるなら、
2・3年くらい休んでもいいかなとも思うし。
まあ、今は余裕が無いから無理なんですけど(笑

むしろ仕事じゃなくて、子どもに専念できたら
もっと自分に余裕ができるんやろうか?って、
ふと思うときはあります。

・松本
うーーん。さっきとは逆の発想よね。
稼げないストレスを、
子どもに時間をささげることで解消する…、
つまり「余裕」に変えるってこと?

・涌井
うん。

・松本
子どもをみてあげてるっていう、心の余裕ってことか!

・涌井
かも。

・松本
子どもをみてあげられないことがストレスになる?

・涌井
それもあるかな。
1人の時はそこまで思わなかったけど、
2人になってそれこそ朝、わー、わーーって送って、
夕方5時に仕事が終って、急いで迎えに行って、
家着くのが6時半くらいで、ご飯食べさせて、
お風呂入るよって、遊ぼうって言ってても遊べなくて、
もう9時やで、寝るでって、きょうはもう9時過ぎてるから本読まへん、
とか言って、一日が終わるんですよ。

・松本
うんー。そうやんなあ。
うちでもあっという間やもんなあ。2人おったら尚更よなあ。

・涌井
ごめんなあって思うことが、ちょくちょくあるなあって。
でも24時間子どもたちとずっと一緒だと、それはそれでしんどいな、とも思う。
…って、どっちやの!って、自分でつっこみたくなるどっちつかずな話だけど。

例えば、
お仕事帰りにちょっと一杯ひっかける、
くらいの時間もお金も余裕がある、
そんなのくらいがええなあって(笑

・松本
余裕って単に「時間」があれば出来るんじゃないのね。
動く選択でも、止まる選択でも、その人によって、
ストレスの感じ方が違うのね。

ママが子どもの写真を
SNSに載せるのは、
子どもが今の「軸」だから。

IMGP0355m
・松本
子ども…って、大きな存在だよね。
かわいい?おもしろい?
どっち?

・涌井
(即答で)面白い。

・松本
ふふっ。涌井さん「面白い」のん、好きよね。

・涌井
大阪人だからですかね(笑

・松本
その「面白い」の軸が、昔は演劇とかで、
今は子ども向かってるのかもね。

・涌井
ああ、そうかも知れない。子どもは、すごく面白い。

こないだ、若い女性としゃべる機会があったんですけど、
その子は20代後半でね。まだ結婚してなくて。
周りがどんどんバタバタ結婚しだして、
子どもも産んで…、っていう状況。
で、
彼女が言うには
「友達がFacebookに、
(子どもが)『歩きました』とか、『食べました』とか、
子どもの写真ばっかり投稿してて、正直めんどくさいんですよね。」と。
「だから何なん?って思うんですよね。」と。
「なんで、あんな、結婚して子ども産んだ人は、
ああいうことしか書かへんのかな。」
みたいなことを言ってたんですけどね。

いやだって、それがいま私の軸なんやもん、
面白いんやもんって。。

・松本
うんうん。

・涌井
でも私は私で、独身の人がおいしいご飯食べに行って、
イエーイみたいな写真見て、
ええなあ・・・と思ったりするわけじゃないですか・・・(笑)
だから、やっぱりそのお互い無い物ねだりもあったりするんかなあ、と。

・松本
そうだね。SNSは確かに、仰々しくいうなら
相手がいま生きようとしている世界や、判断基準が見える。
あー、今この人はこういう世界で頑張ろうと思ってるんだなあ、とか、
へー、それを良しとしてるんだなあ、
これを悪しきとしてるんだなあ、とか。
ちょこっと垣間見える。

でも要は、自分が読んでて面白いなあ、
楽しいなあって人の記事だけ読んでて、
相性が合わない人の記事はみなけりゃいい、
ってただ、それだけのことなんだけどね。

・涌井
そうね(笑

面白くて作り続けてたら、
みんなが笑ってくれた
「ダジャレ弁当」

・松本
「面白い」っていう要素は、
きっと涌井さんの生活の中でとても大きいでしょう?
でも、さっきから言うように、
きちっとしたいそもそもの性格と照らし合わせると、
面白いことやるにも、
いまのこの環境では難しいんじゃない?
面白いことって、余裕がないと出来ないでしょ?

・涌井
うんうん。
だから、「ダジャレ弁当」って、ええの見つけたなあと思って。
結構長いこと続けてるけど、
自分が面白くてやってるからまったく苦じゃない。

・松本
ダジャレ弁当、かなり注目されたよね!びっくりした?

・涌井
うん、びっくりした。
最初はただ主婦の楽しみレベルで、続けてたこと。
それがまさかあんなにネットで広まるなんて、
想定もしてなかったし、
ましてやテレビの取材がくるとか、
そんなこと考えてもなかった…。
なにがびっくりしたって、
みんながこんなに反応してくれることにびっくりした。

<以下、涌井さん作のダジャレ弁当代表作>

13647131_979524815498280_707416651_o CH揚げ&茄子KA(CHAGE&ASUKA)

13681909_979523582165070_1151184315_o ファインディング煮物(ファインディング ニモ)

13833165_979523178831777_598928710_o エービーチーリーイーエフジー!(ABCDEFG!)
13843492_979522758831819_1461832171_o ルージュのレンコン(ルージュの伝言)

13901910_979521838831911_1618754269_o かぼちゃンペ。(カトちゃんペ)
・松本
今までの流れとはちょっと違うじゃない?
面白いことは好きだけど、自分は主役にならない、
だから劇団は作らないけど、参加はする。
でも「ダジャレ弁当」では
いままで主役にならなかった涌井さんが主役になった。

・涌井
でも、あれも自分では「裏方」のイメージで。

・松本
あらそうなの?

・涌井
ブログも私じゃないの。ブログはうちの夫が更新していて。

・松本
あ、そっかそっか。
ご主人が公開してるんだ。
やっぱり裏方が好きなのね?
裏方で、きちっとこなして密かに「よっしゃ!」みたいなガッツポーズを・・・?

・涌井
そう!そっちのほう。裏方で信頼されるほうが好き。
あんまり「俺が、俺が・・・」って行くのは私っぽくないし。
そこまで自信がない(笑。
なにより今の環境で無理なく出来るし。

・松本
いわゆる「余裕」があるのよね。

・涌井
そう。だから、いい趣味やなあと思って。
たった5分くらいの作業なんだけど、
「ダジャレ弁当」を作ってるときは、「自分の時間」って感じが、すごくある。

・松本
あーー。なるほど。

・涌井
その5分はなんか、自分にとって必要な時間というか、
大げさだけど、その5分で自分を保ててるのかもしれないなあとか、
思ったりもする。

・松本
自分を保つって、大事よね。
すごい当たり前のこと言ってるけど、自分が壊れたら、
たぶん家族みんな倒れちゃううじゃない?
たかが、って言ったら申し訳ないけど、
たかがお弁当で、こんなに自分も維持できるんだったら、
まーるくオッケーよね。

・涌井
どっちかっていうと、職人さんの気分に近いのかなあ・・・。
なんというかこう、(難しい顔して)煎餅をこう、焼いてる職人に近い感じです。(笑

・松本
これからも職人気質の「ダジャレ弁当」、楽しみにしてるわ。




■ 取材後記

彼女にとって「面白い」ことはとても大切な要素でした。
でももっと私が興味深く感じたのは、
「面白い」ことをできる、
自分なりの立ち居振る舞いを彼女自身がよく知っていたこと。

そんなの、大人だから当たり前でしょ、と思うなかれ、
案外そうでもない気がするのです。

だってほら、SNSでも「Facebookを集客ツールにする方法」とか
「最強の●○でお客様を惹き付ける方法」とか、いろいろあるじゃないですか、
ノウハウ系の記事って。
それって多分、
「自分がどうやったら面白いことが出来るか」が、分からないから人に聞いてんだろうな、と。

ノウハウ系がダメっていう話ではなく、
人に聞かずとも自分で面白いことを見いだせてる
涌井さんが面白いな、凄いな、という話。
だから「ダジャレ弁当」はネットで反響を読んだ。
テレビも取材した。
やっぱりね、面白いことは面白いことが分かっている人に任せたらいいんですよ、きっと。

もうひとつ伝えたかったのは、
そんな面白い涌井さん自身から見えた「もがき」。

ひとりの母として、ライターとして悩み、もがいていた。
なんだったら今も。
なんというか、SNSですごい「いいね」を持っていたり、
反響を持っている人は、すごくもがいているからこそ、
フツーじゃないものを産むのかな、と。
本人にとって、それはなんの苦の無いことでも、
「フツーじゃないことを生み出せるチカラ」と「もがき」は、
セットなんじゃないか、と。
だったらいま自分が抱えてるもがきも無駄じゃないのかもね、って思えたら、ほら
また明日も頑張れそうだなあと、思えるじゃないですか、ねえ。

涌井亜希子(フリーライター ※現在は育児中のため会社勤務)

ライター歴13年。大学卒業後は、TV番組の制作会社へ勤務。
芸術系大学の研究室勤務を経て、本格的にライターの道へ。
制作会社でのサラリーマン時代は、大手情報出版社への出向業務などを経験。
出向先で結婚情報誌などの文章作成を数多く手がける。
2015年、個人的にご主人に作り続けていた「ダジャレ弁当」がネットで評判に。
評判が評判を呼び、テレビ番組や雑誌等、数多くのメディアに取り上げられる。
現在は子育て中心の生活で、出版会社の編集部で時短勤務をしながら、
5歳と2歳の男の子、2児を育児中。