Monthly Archives: 6月 2017

【ルーツVol.7】職業:灯台もと暮らし編集長 /ライター/フォトグラファー 伊佐知美

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既にWEB上でもリアルな場でも、根強いファンを数多く抱えていらっしゃるメディア「灯台もと暮らし」。「これからの暮らしを考えるウエブメディア」というキャッチフレーズのもと、編集長をつとめる伊佐知美さんに今回はインタビューさせていただきました。伊佐さんが主宰する、編集者・ライター・メディア運営者向けのオンラインサロン「編集女子が”私らしく生きるため”のライティング作戦会議」に参加させていただいてるわたくしは、伊佐さんにお会いして以来ずっとお聞きしたいことが山盛り。たくさんの質問を胸に秘めつつ、ひとりのライターとして、またひとりの経営者として、いろんなお話を伺いました。




「女性の働く地位向上を!」なんて大それたこと、
まったく考えていない

・松本
いつもオンラインサロンや、Facebookグループで投稿を拝見しているのですが、なんというか…海外を股にかけてカッコ良くお仕事されているのに、 “いい面”ばかりではなく、迷ったり、模索したりする様もそのままオープンにしてらっしゃるところが面白いなと感じていました。
ライターや編集者を目指す人にとってはもちろん、現役バリバリの人たちにもきっと「あぁ、リアルな話でいいなあ」と。

・伊佐
ありがとうございます(笑

・松本
単にライターやリモートワークへの憧れをあおるような情報発信の仕方じゃなくて、とても地に足が付いた感が個人的には大好きです。
ひとつお聞きしたかったのが、サロンの投稿でちょこちょこ見せてくださる伊佐さんなりの「迷い」について。いままさに、何か迷ってること、ってありますか?

・伊佐
そうですね。やりたいことはいっぱいあるんですけど…。
そもそも「どう生きていこうか」みたいなのに迷ってますね。
テーマがおっきすぎて、悩むとこじゃないのかなあ、とも最近思うんですけど(笑。
どう生きていこうか…。うーん、いや違うな、どう生きていこうというより、「どこで」生きていこう?ですかね。

・松本
場所ですか?それはけっこう、意外でした。これからも場所は決めないで行くのかな、なんて勝手に思ってましたが、そうではないんですね?

・伊佐
みんなやっぱりそう思うんですね(笑。
確かに旅は好きなんですけど、ずっと定住しないつもりもないんです。でもずっと旅人みたいに放浪して、たぶんこの人は家庭も要らないんだろうな、って思われてるらしい…(笑

・松本
(笑)確かに海外飛び回って、お仕事されている姿をブログで頻繁にみていると、そう感じている人もいるかも。

・伊佐
もうひとつ感じるのは、「伊佐は、女性の働く地位を上げて行きたいんだろうな」と、思われているふしがあること。…全然思っちゃいないです。(笑)

・松本
(笑)リモートワーカー=女性の働きやすさ=女性の地位向上、みたいな構図ですかね?
でも元々「女性の地位向上を!!」という具合に、先頭きって旗掲げるような肩の力の入った感覚は、伊佐さんからはまったく伝わってこなかったです。だからお話聞きたくなった、というのもありますが逆に力入ってないのに、影響力あるのはすごいなーとも思います。

・伊佐
いやいやいやいや…、影響力ないですよ…。だって先日トークイベントでご一緒させていただいたはあちゅうさんだったり、イケハヤさんだったり、ものすごい影響力ある方が周りにいると自分なんてもう“小者感”がすごくて…。なので、ホントに大それたことは考えていないんです。
ただ、海外を旅しながらリモートワークしていると、その動き自体がライターとして自分の個性にも繋がりました。好きで続けていただけなんですが、結果的に私の働き方に注目頂いているのは確かですね。

 

やっぱり人と会うのは大事
リモートは手段でしかない

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・松本
個人的には「女性とは?」「男性とは?」「働き方とは?」みたいな枠を、あんまり決めすぎたり、声を大にして主張し過ぎると、絶対当てはまらない人が出てきて、苦しむ人もでるんじゃないかな、と思ってまして。
極論ですけど、長時間労働がしたい人はすりゃいいし…って、本音の部分では思ってるんです。だからリモートワークもしたい人はすればいい。

でも解決出来たらいいなあと思っているのは「したくても出来ない人」がいる状況。
自分ではリモートワークしたいって思ってるけど、うまく出来ない人が私の周りには結構いっぱいいるんです。

・伊佐
なんでですか?

・松本
能力的にとか環境的にとか、理由はいろいろです。
例えばITリテラシーが低い人なら、ネットでのコミュニケーションが苦手だったり、ITツール自体に不慣れだったり。「Gmailの転送設定ってどうするの?」とか、細かいことがひとりで解決出来ない。つまり、リモートワークでふと分からなくなっても、横に聞ける人が居ない状況では仕事が進まない。そこで「あ、私ってリモートワークに向いてなかったんだ…」とふと気づく、と。
一方で、仕事はひとりで完結出来るスキルはあるけど、子どもが家にいると仕事が進まない…、とか、会社には行きたくても子どもが待機児童だから行けない、とか。いろんな人がいる。

・伊佐
ふんふん。家族の介護をしないといけない、という方もいますよね。

・松本
そうです、そうです。そんな上手くリモート出来ない人たちに、「上手くリモートワークするコツ」を伊佐さんがアドバイスをするとしたら…。いったいどんなコツなんだろうなあ、って。

・伊佐
うーん、どうなんだろう…。私の場合、リモートっていってもかなりのリモートですもんね。参考になるかな。何万キロ離れた海外でリモート、っていう…(笑。

・松本
超リモートですもんね(笑

・伊佐
でもわたし、タイムラインは東京だったんですね。
暮らしとか、寝食とかはきちんと滞在している現地時間にあわせてたんですけど、ありとあらゆるツールを使って東京のメンバーとコミュニケーションしてたんです。Googleはもちろんのこと、Slack(スラック)、LINEFacebookメッセンジャーTwitter…。なので東京の時間軸からそんなに離れてるな、という感覚はあまりありませんでした。

東京では会社や自分たちのチームがあって、みんなが私の不在分もカバーしてくれます。東京に居なきゃできなかった仕事、例えば打ち合わせにいく、などというフローは伊佐の代理で誰かが出席してくれるんですね。だから私も自分の仕事に専念できた、と。

あとは、編集者としての仕事も他のスタッフに助けてもらったり。海外ではセキュリティの問題で、渡航した最初の3か月だけはWordPressに入れなかった時期が一定期間あったんです。管理画面にログインできなくて。そんな時はライターが上げて来てくれた文章を、一番信頼している編集者に代理入力をお願いするなどしていました。
つまり、お互いの業務をカバーしあえる体制がある、ということもリモートワークが上手くいくポイントかもしれませんね

結局、100%遠隔、ずっとリモートワーク、では多分仕事って出来ないんだろうなあ、と
人と会うのはやっぱり大事で。リモートはあくまで手段でしか無いんだろうなあ、と思っています。

 

人生は制約がある方が
幸せかもしれない

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・松本
おっしゃる通り、「リモートワーク」は手段であり、ひとつの選択肢ですよね。別に、リモートワークじゃなくて働けるなら、会社にいけばいいんだし…。

・伊佐
そう。いや、会社があるってホントにすごくイイことですよ。
場所があるってほんとにイイ。

・松本
伊佐さんは、海外に行ってそう感じるようになったんですか?

・伊佐
そうですね。それはあります。帰国した今も思うかな…。

・松本
どんなところがイイと?

・伊佐
会社があることで、いいこと? …大丈夫かな?こんな話して(笑。

・松本
ダメならカットします。(笑)

・伊佐
人生は、制約がある方が幸せだ、ってことです。

・松本
うーーん!深い!でも分かる!!

・伊佐
深すぎて…ちょっと重たい話かもですけど。
「100パーセント自由」なんてね、結局不幸なんじゃないかな、と。
不幸とまではいわなくても、自由=選択肢が多い、ということでしょう?自分の責任が100パーセントの中で、たくさんの選択肢からいろんな判断をしていかないといけない。
でも何が起こっても「自分が選んだから」と、そこに答えは落ち着く。
すごく当たり前なんだけど、すごく厳しい世界でもある。
いま、大手企業に勤めてた時との一番大きな差を感じるのは、「昔は上司の愚痴言えた」っていうことですね。「あの人が…」とか、「このルールが…」とか、責任の所在を自分以外のところに探せる。
もちろん、フリーで仕事するのは楽しいんですよ、めっちゃ楽しい。だけど、自分の置かれている環境が、何ともいえないほど一気に広くなった、そんな感覚はあります。

・松本
全てが自己責任になりますもんね。

・伊佐
うんうん。会社に通うとか、自分の行く場所があるとか…。居場所があるってやっぱりすごくありがたいことなんだなって思います。

 

雑談こそ大事。

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・松本
仲間に会える場所って大事ですよね。他愛もない雑談したりするのも結構大事。

・伊佐
そう。雑談から生まれるモノとか、吐き出せることとか、意外と多いんです。
雑談ってすごく大事。むしろ一番いい企画とかは、雑談からですね。

・松本
今、会社のメンバーで一番雑談するのって、誰です?

・伊佐
うーん、どうだろう。代表の鳥井とはよく話すかなぁ。メンバーとは1週間に1回とか定期的にSkypeとかで話す機会を設けていたんだけど。編集会議とか。鳥井とは電話でも1対1でたまに話していたりしたかな。特に彼とは、日常的にslackで雑談しますね。
slackって最近は使っている方も多いと思うんですが、”LINEのみんな版”みたいな感じです。slackで連絡をとらないのは、この3年で数日あったかな?くらいで。

・松本
そういえば鳥井さんって、伊佐さんにとってはどういうポジションなんですか?
傍から見てるとなんだかユニットっぽく見えるんですが…。違うのかな?
例えて言うなら、ドリカム、みたいな…。

(両笑)

・伊佐
ドリカム?(笑)私が密かに好きなのを知って言った?(笑)鳥井とペア?というのはたしかにたまに言われます。

どうなんでしょう。でも、たしかに鳥井の会社で働けているのは、リモートワークする上で大きかったと思いますよ。

 

前に進み続けるメンバーとの
科学反応が楽しくてたまらない

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・松本
鳥井さんと一緒にやろう、って思った決め手って何かあったんですか?

・伊佐
私がいま所属している株式会社waseiは、鳥井のほかにも創業メンバーがふたりいるんですよ。
私と、立花っていう女性編集者と、小松崎っていう男性カメラマン。
この4人が元々同じ編集部に居て、その人たちの創るモノとか、肌感とかがすごく、お互いに好きだったんですね。このメンバーで何かモノ創りしたい、一緒にしたいっていう流れで今のカタチがあります。私の人生で一番最初の編集者が立花なんですけど、鳥井は当時のチームで編集長だったんです。
色んな編集長とお仕事させていただきましたけど、この人の創るモノって誠実だな、信頼できるな、と。なにより私の能力を一番信じてくれたのが鳥井だったんです。

・松本
いま「灯台もと暮らし」筆頭に、いろんなメディアを運営されていますよね?このチームで動くモチベーションって「楽しい」という感覚に尽きますか?
なんというか…、今この4人をメンバーとして選んでモノづくりをしてる、伊佐さんの真の“ツボ”ってなんだんだろうなーと。鳥井さんの「誠実」さ、みたいなキーワードも出てましたが、他メンバーの誠実さにも惹かれて動いてます?

・伊佐
このチームで動くモチベーション、かあ…。「旅」はまた別軸です?

・松本
あ、そうですね。もちろん、このチームだからこそ「旅」というモチベーションも満たされているのだと思うのですが、それとは別に、なにか伊佐さんの中で軸になっている要素ってありますか?という質問です。

・伊佐
うんうん。
要は、なぜこの4人でチーム組んでるのかみたいな話…?

・松本
はい。さっきの、「居場所」があることへの価値も確かに感じてらっしゃると思うんですが、極論、場所は他にも作れるじゃないですか。
でも今「このメンバー」で、もの創りをする意味というか、このチームでいるメリットとか、魅力みたいなものが何かあるのかなあ、と。

・伊佐
なんかあるんですかね?(笑
きちんと言語化したことは無い気がするなあ…。
なんだろう。でも楽しい。

・松本
意識したことはないですか?

・伊佐
そうですね。あー、でも面白いと思うのは、みんなが変わってきているから、かなあ。
今ね、出逢ってから3〜4年経ったんです。
全員年が違うんですけど、それぞれにやりたいことがみんな変わってきてて。
「暮らしながら働けてる」と言う感じ。伝わりますかね…。
お互いの変化を楽しみながら、また化学変化が起こってるという感じで、そこが面白いんです。

・松本
それいいですね!みんな前に進んでるってことですね。いいなあ、いいなあ。

・伊佐
うんうん。みんな前に進んでる。
でも私はけっこう欲が強い方でね。わがままというか、「これやりたい!」みたいな欲望が強いほうなんですけど、ほかのメンバーは全然そんなことなくって…(笑
私だけどっちかっていうと異質。みんなはもっと穏やかなんです。

・松本
(笑)なるほど。すると、4人でバランスがとれてるってことなんですかね?

・伊佐
そう。だけど、みんなに共通しているのが「前に進むことを特別に思ってない」ということ。普通なんですよ、彼らにとっては変化することが。

・松本
なるほど。みんなの中で当たり前のことにあえて「いざ進め!」と、旗をふらなくってもいい。それぞれのペースで着実に進んで行けばいい、と。
そういう集団なら確かに、愚痴なんて出ないんでしょうねー。
愚痴が出やすい集団って、往々にして進みきれてない組織のような…。
愚痴が出ない、だからストレス感じない、ゆえに楽しい、と。

・伊佐
うん、楽しいですよ。楽しい。ま、楽しいだけじゃ生きていけないですけどね(笑。

・松本
うん、でも大事ですよね。

 

リモートワークするのに
雇用形態はあんまり関係ない

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・松本
伊佐さんみたいに、楽しくリモートワークしたいなら
まずは「フリーランスになれ」って言いますか?

・伊佐
リモートワークがしたいなら…?
いや、いや。リモートワークは誰にでも出来ると思ってます、私。
会社とか、フリーとか、あまり関係ないと思うんです。
クリエイティブ職とかデザイナーとか、だけがリモートワークに向いてる訳ではないと思うので。

職種とか、雇用形態とかよりも、大切なのはその「頻度」かなあ。
週5日リモートワークって、結構良くないなと思ってて。
半々か、リモートワークがちょい多いくらいか。今はそんなペースなのでちょうどいいんです。

会社務めしてる時も事務仕事って結構あったんで、パソコンの前に座ってることは多かったんですよ。でもこの作業って家で出来るんじゃない?と。
確かに金融業は「持ち出し禁止」とか制限はありますけどね。
でも週1日ペースくらいでリモートワークを取り入れるなら、実は結構いろんな組織で出来るんじゃないかと思ったりしてます。プレゼン資料作るなんて、どこでも出来るし。

・松本
ちょっとリフレッシュも兼ねて、みんなリモートワークしたほうがいいよって感じですか?

・伊佐
うーん…やってみたいなら、みんなやったらいいんじゃないか、って思うんですね。
だってけっこう、楽じゃないですか? リモートワークって。
なんでみんな、週5で毎日2時間電車乗って同じ場所へ行ってるんですか?
…いや、分かりますよ、わたし会社員だったから。めっちゃ分かりますよ、同じ場所へ行く理由は。

(両笑)

・伊佐
でも単純にそう思います。だって私、いまここに居てもいいし、バルセロナに居てもいいし、オーストラリアに居てもいいし。どこに居てもいいけど、たまたま今ここに居ます、と。そういう選択肢ができる人生って、けっこう楽じゃないですか?それくらいフランクに考えています。

・松本
そうですね。でも、会社に来てもいいし来なくていい、っていうように、働く場所は働く人が選べるっていう状況は、会社がスタンダードにしてあげないとなかなか実現できないですね。

・伊佐
そうですね。だから規模が大きい会社だと難しいのかもしれない。
社員のこと信頼しないといけないから…。

・松本
あ、そうですね。以前鳥井さんもTwitterで書いてましたね。
「スタッフを信用しないなら、リモートワークを取り入れるべきじゃない」みたいなつぶやきでした。あー、伊佐さんとの信頼関係があるんだろうなあと。

・伊佐
あれはねー、プレッシャーですよ。あれは。ああいうのは(笑。

・松本
(爆笑)
なるほどなあ。従業員からしたら、そっかー、そうかもですね、確かに。

いまずっとお話を伺ってるとね、伊佐さんの中でリモートワークって全然特別なことじゃなくて、すごく自然なことなんだなー、と。それはすごく伝わってきました。

ただ、「リモートワーク」っていう旬のワードゆえに、先のお話みたいに「女性の地位向上」的思想と混同して聞いてしまう人もいる。一方で「海外」とか「ノマドワーク」とか、ちょっとこう華やかなイメージだけを切り取って解釈してしまう人もいる。
なんというか、少数派のスタンスって正しく伝わりづらいんだなーと思いました。
会社勤めだけが正解じゃないし、フリーランスが絶対ってわけでもない。
うまく言えないんですが、個人が自由に生きていける術を、会社はいくつも用意してあげられるといいですね。

・伊佐
そうですね。ただ個人的に今は、だいぶ自由に働き過ぎて不安になって来たんですけど(笑。

・松本
(笑)年齢的にもそうなのかもしれないですね。30代って、いろいろ考える年頃ですもん…。

 

好きなことを、徐々に
リモートワークしていけるといい

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・伊佐
松本さんはリモートワークを推奨していきたいんですよね?

・松本
確かに「リモートワーク推進」って言うと、一般的にわかりやすいんですけど、実はリモートワークにこだわっているわけでもなくて。いわば属人的に働ける会社でいたいなあ、と思っているんです。つまり、働く場所は働く人が選べるといいな、と。その代わりクラウドとか、使える仕組みはフル活用して、徹底的に情報共有する、と。
でも正直、リモートの仕組みだけじゃダメだなあ、場所がいるなあって最近思っていて。そこはホントに、さっき伊佐さんがおっしゃった通りです。

・伊佐
場所、いりますよねー。いやあでも、基本はリモートワーク、いいですよ。
その選択肢が出来るっていう人生はいいと思う。
やってみて、一回やってみて、合わなかったらまた辞めればいいし。
リモートワークってすごく効率的だし、逆に何でやらないの、とも思うくらい。
でも大前提として「好きな仕事」でないと、リモートワーカーとして生きていくのは、難しいかもしれないですね。

・松本
なんでそう思いますか?

・伊佐
私はもう好きなことが仕事になってから…、いや、身の回り100%になってから、もうずいぶん久しいのでまったく違和感ないんですが、「9時―5時で終る仕事」ではないんですよね。
例えば9時から12時はお茶飲んでて、12時から始業とかもあるし、海外では、日中日が沈むまで遊んで、夜仕事するとか。自己裁量なので。でもそれでも自分でイイものを創りたいと思ってやるから、「好き」なことに時間をつぎ込むんです。

・松本
なるほど。仕事も人生も一緒で「好き」に囲まれたい、と。
好きなライティングであり、編集であり、旅であり…。チョイスしていった結果、リモートワークになっていったっていう。至ってそれは自然な流れなんですね。

・伊佐
そうですね、私にとってはすごい自然な流れです。いきなり、週5日オフィス勤務の会社員から今の働き方になった訳じゃなくて。ステップを踏んで今があるんです。
よく移住の話をするときも言うんですけど、いきなり田舎にポンっ!と行くよりも、二段階移住、とかのほうがいい。

・松本
二段階移住?ほうほう。

・伊佐
田舎暮らしがしたい人がいるとしてね。正直、知らない町にいきなり行くのって誰でも怖いじゃないですか。
例えば、その人が福岡が好きだとするでしょう?その時はまず福岡市内で、ある程度都会に近い生活スタイルができる場所に一回移住をする。そして普通に就職をして、週末とかにいろんな場所に遊びに行くんです。海とか山とか。そんな生活に慣れてからようやく本格的に動く。例えば糸島の端にあるちっちゃい村に移住する、とか。
いきなりよりもすごくスムーズに暮らせます。友達も出来るしね。

それと同じで、ライフスタイルや仕事の仕方をいきなり変えるって、どんなに望んだ環境でもストレスは絶対にあると思うんです。
私も週1回リモートワーク、とかから始めました。出張先で色々やって、「あー、仕事って場所変わってもできるじゃん」っていう成功体験から、週2回リモートワークになって、それが週5日になって、次は海外になって…、という感じなので。
徐々に、がいいと思いますよ。

・松本
なるほど。無理をしないって大切ですね

 

リモートワーカーになりたいのか、
ライターになりたいのか

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・松本
好きなことでリモートワークを、というお話が出たので質問なのですが、「ライターになりたい!」っていう人って、たくさんいると思うんですね。でもよくよく聞くと、それ、ライターになりたいんじゃ無くて、リモートワーカーになりたいんだよね、というケースも少なくない。
あ、これは決して責めている訳じゃなくて、「リモートワークしたい」っていうのに気付いてないだけなんだなあ…と。

・伊佐
多分、リモートワークをしたいっていう願望に対して「ライター」という職業が目に付きやすい時代なんだな、とは思います。
いきなりエンジニア、デザイナー、よりも、日本語が書けるならライターです、って言いやすい。

・松本
そうですね。でも書くことが好きで、ライターになりたい、っていう人なら絶対耐えられるんだと思うんですが、そうではなくて「リモートワーク」をしたい人には、辛すぎるストレスがライター業には多々ある。例えば編集者やディレクターからの猛烈な赤入れ(訂正)とか。
伊佐さんだったらリモートワーク思考の人に、ライター業は薦めます?
それとも「頑張るとイイ人生が待ってるよ」って励まします?どっちでしょう。

・伊佐
…本音でいいですか?いや…ライターになる気がないんだったら無理ですよ、この仕事。いくらリモートワークしたくても「やめたほうがいい」ってシンプルに言います。

・松本
やっぱりそうですよね。はい、愚問でした(笑

・伊佐
(笑)ライターって、日本国中みんなが「書けちゃう」からこそ難しいんだと思います。
でもライターの教育コストって実はホントにすごくかかる…。コストもパワーもすごくかかる上に、ライターが吸収する気持ちとか、前向きさとか、貪欲さを持ってくれてないと、何をやっても、響かない…。

・松本
いやもう、ほんとそうですね。

・伊佐
もっといえば今の時代、ニーズが高いWEBライターを未経験ではじめて、それ一本で生きていくとしたなら、さらに厳しいかも…。紙とか書籍でのライティングの経験がある・無しは、意外と大きいと思います。うん、ほんとに難しいと思う…。

 

素直な人はスキルも収入も
きっとあげられる

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・松本
やっぱり未経験からライターとして食べていくのって、当たり前ですけど難しいですよね…。例えば、伊佐さんの周囲で未経験から始めて、着実に単価をあげていっているライターさんとかいらっしゃいます?

・伊佐
いますよ。確かに未経験から始めると難しいですけど、1本5千円とか、1万円で稼ぐライターにはなれるんじゃないかな、と思います。結構、私の周りにも多いんですよ。未経験から始めて、いまは1本1万円くらいの仕事してます、みたいな人。

・松本
へえー。そのライターさんたちに何か共通する要素ってあります?
ライターとして成長出来る要素、にもなるのかなと。

・伊佐
うーん、プライドが無い人? いい意味でね

・松本
学ぼうと出来る人、ということですか?。

・伊佐
そうそう。一生懸命書いたコピーに赤字入れられて、素直に「わーい、良くしてくれてありがとう!」って思える人。

・松本
大事!大事!(笑)

・伊佐
「わーすごい、この人の記事、いい!」みたいに人の記事を参考に出来る人は強い。
そうじゃなくて、上がってきたコピーに赤入れしたら「わたし、結構頑張ったんですけど…」みたいな人は、「じゃあ、違う所で頑張ってくださーい。」ってなる。

・松本
(笑)そうですね。でも東京と大阪って、単価も違うなって思いました。スキルあげつつ、仕事取っていく場所も大事なのかな、とも。

・伊佐
それはめっちゃ聞きますよねー、やっぱり東京と地方とでは単価が違うって。
人間関係も西の方が濃かったりしますよね。
わたしね、あんまり「人脈」って言葉好きじゃないんですけど、
でも人と会うこと、会いに行く、っていうこと自体は、とても大事なことだと思うんです。
松本さんとお会い出来たのもサロンに入って下さったからだし。
会うことを大事にするって、とてもいい思う。

・松本
そうですね。
私はいまもライターですけど、本職は経営者だと思っているので、私が従業員の出逢いをどれだけつくってあげられるかに、会社の成長・存続がかかってるなーと。私が外に出て行かないと会社の世界も、従業員の世界も広がらない。伊佐さんのサロンは勉強させていただくっていうのもありますけど、私には世界を広げる場所というか。おかげさまでいまお仕事に繋がるご縁も生まれたので。サロンという貴重な場所を作ってくださって、ほんとに感謝してます。

・伊佐
いえいえ!でもリモートワークって、ライターっていう職業とはホントに相性のいい働き方だと思いますよ。あっ、編集者は未経験からだとキツイと思いますけど…。編集は、もう奥が深すぎて…(笑。

・松本
ですね…。今日はありがとうございました!




編集後記

正直なことを言えば、今回のインタビューは私がインタビュアーというよりも、伊佐さんにインタビューしていただいた、そんな感じが否めません。私が考える「属人的な働き方」に対して、伊佐さんはどんなご意見なんだろう?伊佐さんはどうして場所に縛られず働いているんだろう?いろいろ、いろいろお聞きするうち、ハッと気づいたんです、「私ばっかり喋ってるやん…」と。さすがは伊佐さん、プロです、プロのライター・インタビュアーです。いやはや、人から話ひきだすの上手いです…。
なんて暢気に感想述べてる場合じゃないのは重々承知なんですが、ひとつだけ今回のインタビューを通じて感じた、伊佐さんの素敵ポイントをあげるならば。
それは「人と会うことを大事」にされているところ。バリバリのリモートワーカーなのに、日本国内には留まってないのに、人と会うのはとても大事だと言ってくれたこと。
やっぱりこの人、素敵だー!インタビューは完敗でしたけど、また語り合いたい女性のおひとりなのでした。

伊佐知美

灯台もと暮らし編集長 /ライター/フォトグラファー
1986年新潟県生まれ。横浜市立大学卒。三井住友VISAカード、講談社勤務を経てWaseiに入社。どうしても書き仕事がしたくて、1本500円の兼業ライターからキャリアを開始。2016年は世界一周しながらのリモートワークに挑戦。これまでに国内47都道府県・海外30カ国ほどを旅を重ねる。旅と文章とカメラと恋がすき。時折ポエムも執筆。

【ルーツVol.6】職業:会社経営者 東 智美

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東京・乃木坂にて株式会社トーモを経営しておられる東さん。iPhoneケースの「RAKUNI」やモバイルバッテリー「cheero」をプロデュースされるなど、ガジェット業界における、まさに新進気鋭の女性経営者です。共通の知人から紹介されたのはかれこれ6〜7年前のこと。今回改めて、膝付き合わせながらお話を伺ってみました。




流れに逆らわず、辿り着いたWEBの世界。

・松本

もともと、東さんはWEBのデザイナーだったんですよね?
学生時代からWEBの勉強をされていたんですか?

・東
そうなんです。でもね、「めっちゃWEBの仕事がやりたかった!」とかでは無いんです。
短大卒業間近に、進路を考えてたら父が「コンピューター系を学ぶなら支援する」と言ってくれて。
それがキッカケで、大阪デザイン専門学校のマルチメディア科の1期生になったんです。
当時、マルチメディアっていう言葉が生まれて、流行り始めた時だったんですよ。
Macromediaの製品とか、Adobe Directorとか、Adobe Dreamweaverとか、Adobe Fireworksとかがちょうど生まれた頃。

・松本
20年くらい前ですよね。

・東
そう、ちょうどそのくらい前。BBSとか、チャットのシステムが盛り上がり始めた頃です。
今もお付き合いある方なんですけど、ブイロジックの岡村さんが、私の通っていた大阪デザイン専門学校の臨時講師に何度か来てくださってて。「何でもいいからアルバイトしたい。」って直接お願いしてみたんです。アルバイトでは初期のHTML組んだりさせていただいてました。それがWEBの世界で働いた最初のお仕事ですね。

IMGP1056mini
・松本
東さんってWEB関係の方にとてもお顔が広いですよね?いまもおつきあいがある方々は当時からのお知り合いですか?

・東
ほとんどそうですね。岡村さんが当時、大阪の天六にあった「ディーボックス」っていう、阪急が主催するインキュベーション施設とか、いろんなところに連れて行ってくださって。
昔からITの制作分野にいらっしゃる、笠居 トシヒロ先生や、魚井先生、AUGM(※)の方々とか、すごい方々が集まっているエリアのパーティーにも参加させていただいたんです。そうこうするうちに、最初就職したWEB制作会社の社長からもかわいがってもらって、「じゃあうちで働く?」と。
けっこう流されてるんです(笑。

・松本
笑)でも流されている、というより、流れに逆らってないという印象です。

・東
そうですか?(笑。
すごくHTMLが好き、とかでは全然無かったし、むしろあまり好きじゃない方で…。
就職したWEB制作のプロダクションで最初は、デザインやディレクションをやってました。トータルで22歳から2年半くらい、その仕事をしたのかな?25歳でフリーランスになったんです。
そこから4〜5年くらい、フリーランスのWEBデザイナーとして大阪で活動してました。

・松本
東京でもフリーランスとして?

・東
はい。フリーランスとして、某制作プロダクションのお仕事をメインで受けたり、某ブライダル関連の会社で社内クリエイティブ部門の仕事を受けたり。1度社員としてもお誘いを受けて、WEB部門のマネジメントをしたり、ディレクションしたり、たまに自分でデザインなんかもしてました。
それが34歳くらいまでかな。そこから独立して株式会社トーモを創ったんです。今8期目になりますが、株式会社トーモのスタートはWEBの制作会社だったんです。
※)「Apple Users Groupe Meeting」:各地域ごとにあるAppleユーザーのグループ。定期的にそれぞれの地域で集まり情報交換など開催

マーケットが裸で見える物販の世界。
面白くって、魅力的だった。

IMGP1048mini
・松本
大阪・北浜にあるお父様の会社、ティ・アール・エイ株式会社では、モバイルバッテリーを製造・販売されていらっしゃって、東さんはその事業にも携わっていらっしゃいますよね。
やはりあのお仕事がきっかけで、物販にご興味をもたれたんですか?

・東
まさしく。
当時「cheero」というモバイルバッテリー事業を、父の会社の一部門として立ち上げることになって、一部製品の企画や営業、広報なども担当していたんですよね。

・松本
お父様のお仕事を間近で見ていて、「あぁ、物販って面白いな」と思ったポイントって、どこでしたか?
今までやっていたWEBとは、収益体制もなにもかも、全然違うじゃないですか。
どこが魅力だなって思ったのかなーと。

・東
WEB制作って、あくまでもB to Bか、B to B to Cじゃないですか。
なので割と、1対1の関係性の中で完結していく仕事が多いでしょう。
なので、B to B to Cとかになると、もうコンシューマーの反応っていうのが分かんないんですよね。
モノ売りっていうのは、ダイレクトにコンシューマーの反応が分かる。すごく売れたら、コンシューマーにとって喜ばしいものだとわかるし、売れなかったら興味のないものなんだってすぐに結果が出る。
マーケットが裸で見えるっていうところが、すごく面白いなって思いました。

・松本
なるほどー。
確かにその感覚は、私もB to Bか、B to B to Cの仕事が多いのでよく理解出来ます。面白そうですね。羨ましいなあ…。

・東
ほんとに、面白いですね。
もうひとつ面白かったのは、“ブランドが成長していくってこういうことなんだ”っていうのをリアルに体験できたこと。大阪にある無名の会社がインターネットを通じて、知名度をどんどん上げていって、いろんな人に知られるメーカーになっていく…、っていう過程のど真ん中にいた経験は非常に大きいです。
こんな機会って、あんまりないと思うんですね。

・松本
うんうん。普通はみんな体験したくてもなかなか出来ないですもんね…。

ブランド1年目は鳴かず飛ばず。
急成長の鍵は「ひらめき」

IMGP1085mini
・松本
これまでを振り返ってみて「ブランドを成長させたキッカケ」だと感じている出来事ってありますか?

・東
いくつかきっかけになった出来事はあるんですが、一番最初のキッカケになったのは、「大容量バッテリー」の販売。これは父が考えた戦略で10000mAという大容量バッテリーの初期モデルを、マーケットに低価格で投入したんです。その時アマゾンの部門ランキング1位を取って。それがきっかけで急速に売れるようになりました。

・松本
ほー!どのくらいのペースで売れるようになりました?

・東
ほぼ“倍々ゲーム”です。
一日の注文が十数個だったものが100になり、200になり…という具合。そうなると仕事の内容も変わるじゃないですか。ちょこちょこと入ってくる注文を、通常業務の間に順次発送していたのに、そんなペースじゃマニアあわなくなって社長もスタッフもみんなで一日中、袋詰めしてるっていう…(笑)。たまに大阪の本社に訪れると、会社全体の仕事がほぼ止まってました。

(両笑い)

段ボールに山のように発送品があって、毎日毎日運送会社が取りに来る。一時期、倍々ゲームで増えていった頃の社内はこんな状況でした。
ある時を境にAmazonのFBA(倉庫および発送サービス)を使うことによって、これらの問題はクリアしたんですけど。

・松本
その状況に辿り着くのにどれくらいかかりました?

・東
そうですね、新事業を立ち上げて1年くらいかな…。最初の1年は鳴かず飛ばずだったんです。2年目で大容量を安く出した時に、だんだん売れるようになって。売れていく様を見ていて「ああ、コンシューマーにとって必要なモノだったんだなー」って。リアルに肌で感じられることは面白いなあ、って感じてました。

・松本
そのほかに成長のキッカケになった出来事ってありました?

・東
「ダンボーバッテリー」ですかねー。

・松本
あれはめちゃ可愛いですよね!アイデアは、東さんですか?

・東
そうですね。「ダンボー」を製作しているよつばスタジオさんは、特に人脈などもなかったんですけど、自分たちで調べてオファーしました。

・松本
なんで、「ダンボー」がいい!と思ったんですか?

・東
ある会社へ商談にいったらオフィスに置いてあったんです、「ダンボー」が。
それみてて「これがバッテリーになったら可愛いなー」って、シンプルに思っただけです。

・松本
すごい偶然。でもよくそこで、商品化のアイデアがひらめきますね?
いつも何かを見つけよう、と気をつけてるんですか?
それとも勝手にイメージが入ってくる?

・東
あー、勝手に…。昔からそうなんです。

・松本
天才肌ですね…。私、イメージとかがビジュアルで降りて来ない派なんです。

・東
いやもうね、いきあたりばったりなんで…

(両笑)

※)http://store428d.com/

コンセプトを作るのがすき。

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・松本
物販の面白さを体験した最初の商品は、バッテリーでしたよね?
ただ、いまご自分では「RAKUNI」でiPhoneケースを扱われているでしょ?
こっちのジャンル、つまり雑貨系で勝負しようと思った、キッカケはあったんですか?

・東
そもそも私はエンジニアじゃないんで、バッテリーのようなエンジニアリングに対して、そこまで知識が深くないですからね。しかも私自身、女性でもあるのでシンプルに雑貨とかが好きなんですよ。
でも父の事業方針としては、雑貨っぽいもの、デザインものに関しては注力しない、というスタンスだったので、自然にこのジャンルには自分の会社でとりくんでみようかな、と思ったんです。

・松本
雑貨を作るノウハウはどこで学んだんです?

・東
1度、「cheero」から手帳型の革ケースを出したこともあってね。
そのケースを作ったことを機に、何年間かトルコの革会社とお付き合いがあったんです。
ちっちゃな案件をいくつかやってるうちに、何となく作れるかもっていうのが見えてきた。
ただ、ふつうの手帳型のケースを作ってもあんまり意味無いじゃないですか。

・松本
うんうん。もうある程度、既製品もいっぱいあるし。

・東
手帳型ケースだったら、もうやるつもりなかったんですけど、その裏側にポケットをつけるっていうアイデアが社内で固まってきたので、これだったら戦えるかもしれないと。

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※「RAKUNI」内側|ポケットがたくさん付いていて便利!
・松本
ここまでお話聞いててね、私やっぱり、東さんの「スピード感」が好きなんだなあ、としみじみ思ってるんです。
WEBからcheero、cheeroからRAKUNI…。
なんというか、私の周りをぐるりと見渡したとき、東さんだけ速度が違う気がするんですよ。
「あれ?もうそんなとこ行っちゃってる?」みたいな感がすごくあって。

・東
飽きるのも早い…(笑)

・松本
笑)
なにがモチベーションになってます?

・東
あー、何だろうなあ…。
なんかね、今、この場にない価値観、みたいなもの、
つまりコンセプトを作っていくのが好きなんだと思います。
「cheero」も「RAKUNI」もトーモも、名前から考えたんですけど、たぶん、コンセプトメイキングが好きなのかな?

・松本
コンセプトを作る、かあ。
私、すごく好きです、東さんが作ってる名前たち。どれも万人に分かりやすいし、しかも可愛い。

・東
ありがとうございます(笑
あと、なるべく造語で、ドメイン取りやすいようにするとか。
でも基本的には自分の大切にしたいコンセプトを名前にしてるかな。

・松本
「RAKUNI」で大切にしたかったことってなんですか?

・東
いかに荷物を減らすか…、ですね。
とにかくiPhoneだけで行動したい、荷物を減らしたい、って思いがずっとあって。ほんとに、荷物嫌いなんですよ。
例えば、お財布。持たないんです、基本的に。全部ポケットにじゃらじゃらと入れてて。
昔からカバンも持つの嫌なんで、ひどい時はコンビニの袋にモノ入れて出かけたり…。

・松本
え?(笑
でもいつも綺麗にワンピース着てらっしゃるじゃないですか。

・東
いや、ワンピース、かぶるだけじゃないですか!いちばん楽な服なんで。
コーディネートもしなくていいし、1枚で済むし(笑)

・松本
なるほど!!! そこかー。
てっきりおしゃれ好きなんだとばっかり…

・東
大事なのはおしゃれってことじゃなくて、ワンピース=楽だからっていう選択…。もうとにかく「煩わしいのが嫌い!っていう思いが昔からある。
だから「RAKUNI」っていうブランド名も、その発想がベースにあるんですよ。「RAKUNI」さえあれば外出できる。
幸いApple Payが実装されたりとか、これ1台でいろんなことが出来るようになってきたので、より価値は増してると思います。

・松本
へえー!!
いやー、やっぱり自分のストレスを解決するとか、自分が欲しいものをカタチにする、ってスゴく大事ですね。

実は、正気の沙汰じゃないといわれてた

※ここで、パートナーのおおつね氏登場

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・松本
東さんってどんな人ですか?

・おおつね
悪い風に言うんだったら、客観視が出来てないっていう。
でも、ある意味それは、自分がいいと思ったらいい、っていうことでもある。
まあ、普通このご時世に、iPhoneケースつくらねーだろって思うでしょ。

・東
ああ、そうそう。直接的に批判や忠告をされたワケじゃないんですけどね、当時は周囲の反応もあまり芳しく無かったんです。
「RAKUNI」発売当時はちょうど、ケース業界で倒産してる会社がいっぱいあって。なおかつ、出したのが5月末で、もう次のiPhoneが出る直前。みんな業界の人達は、そのタイミングでの参入にびっくりしてたみたいで。

・松本
へえー、そうなんですね。でも売れましたよね?

・東
はい。メディアに取り上げていただいて、とても好意的に書いてくれたのが大きな要因ではあるんですけど。
いざ発売してみたら結構売れたことで、目立った名前になりました。

・松本
以前、個人的にお話しした時、小さい企業がものを売るなら、「商品が良いこと」と、「売り方」が大事だっておっしゃってましたよね。まさにそれですよね。PRがきちんとできた。

・東
そうですね。
最初のスタートダッシュは、みなさんに応援していただいてホントにありがたかった。
でも一部の関係者にのちのち「僕、あの時の東さん、正気の沙汰じゃないと思ってました。」と直接言われて、ああそうだったんだって(笑
でももし当時に、周りの本音が私の耳に届いてたら、もしかしたら気持ちが弱ってたかも知れない。逆に、全然聞こえてなかったので作れたかな、と思います。

 

シンプルに「やってみたい」という
気持ちで動いている。

・松本
周囲の声が聞こえなかったから行動出来た、っていうお気持ち、スゴくわかります。聞こえてたら、持ち前のスピードが鈍っていたかもしれないですよね。

・東
そうですね。というか、スピードあるかなあ、私。
いやー、スピードは無い方じゃないかなあ…。

・松本
横で見ててどうですか?(おおつね氏へ)

・おおつね
せっかちなんじゃないですか?自分では普通、なんでしょ?
客観的には、せっかちだから。客観視は苦手なんでしょ。

・東
たぶん、面白い商品見たら、後先考えずに買う、テレビショッピングみたいなマインドに近いような気がする。

・松本
それどういうことですか?(笑)

・東
テレビショッピングって、ふつうの人だったらちょっと立ち止まって、デメリットとかいろいろ考えるじゃないですか。
私そこは全然考えずに、「え!これ何?新しい!」「え!欲しい欲しい!」みたいな感じでオーダーしちゃう。RAKUNIもそのノリ。「やってみたい!」と。あ、これ、父の血なんですよ。

・松本
ほう!

・おおつね
やってみたかった。

・東
そう、やってみたかった。あ、それやわ、「やってみたい」で動いてるな、私。

・松本
なるほど…シンプル!
「やってみたい」で動いた結果、これは成功したなあって、思えるNo1はどの事業です?

・東
大成功の企画は「ダンボーバッテリー」?
マーケットへのインパクトが大きかったですね。業界のスタンダードを変えたっていう。でも、そういう意味での大成功って「ダンボーバッテリー」だけかなあ…。

・おおつね
知名度も何もかもアップ。モバイルバッテリーの流れは変わったし。

・松本
売上高がいいだけじゃなくて、業界のそもそもの流れを変えたっていうのがすごいですよね…。しかも失敗もないところがスゴい…。

・東
めっちゃ失敗はしてないです。
そもそも開発途中で「これ売れないんじゃないの?」とか、ちょっと違和感感じたら、スッとやめてしまうから
自分がどうしても使いたいものじゃ無かったら、売れないだろうって思ってる。
ここもシンプル。「RAKUNI」は使いたくてやってるし。

・松本
自分が使いたいから、そもそも荷物持ちたくないから「RAKUNI」…。

・東
そうです、そうです。

・松本
「楽になりたい」っていうコンセプトで作ったのに、東さんが楽にならない、使いたくないアイテムなら、そもそも成り立ってないですものね。

・東
すごい大きな会社だったら、マーケティングデータから確度の高いモノ抽出して、たくさん作って、バーンってマーケットに放り込んで、売れないやつは切って、売れてるやつを残してって、っていう戦略をとったらいいと思うんですけど。小さな会社はそんな風にはできない。よそがやってないことをやらないと、生き残れないんでね。

・松本
「やりたい」を追求するって至極シンプル。でも一番大事な気がしますね。

 

昔からの仲間がいなければ、
いまの自分はいないかも

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・松本
今までで、一番のキーパーソンだったなって思う人って誰です?1人だけ挙げるとしたら?

・東
父以外で挙げるなら…
こういうガジェット業界に入ったキーパーソンは、Macお宝鑑定団のダンボさんかな。ブロガーさんです。
もう、25年くらい、Appleのことを毎日何本も記事書いていらっしゃいます。

・松本
え!毎日何本も!?

・東
そう。記憶力が死ぬほど良くていらっしゃって、データにもとてもお強くて。
なによりAppleがすごい好きな方。なので、Appleに関連することで頑張る人をすごく応援してくださるんです。
ダンボさんが、私が上京するタイミングで、ほんとにいろんな所に連れて行ってくれて、いろんな人紹介してくれて。AUGMにも呼んでくれて…。
ダンボさんとの出会いが無かったら、「cheero」を売るきっかけも無かったと思います。

・松本
ダンボさんとの出逢いはどの時代に?

・東
私が27の時。WEBディレクター時代ですね。
当時、Appleの心斎橋店がオープンしたのを機に、ダンボさんほかAUGMの人たちが、大阪にいらっしゃったことがあるんですよ。オープニングイベントなんかを楽しむために。そのタイミングで知りあったんです。
ダンボさんのmixiに、「もし、オフ会されるんなら参加したいです。」ってコメントしたら、「言いだしっぺが幹事しろ」って返信が(笑。
まだその時、誰一人知りあいがいなかったんですけど、60~70人くらいの飲み会の幹事、したんですよ。

・松本
え!!
60人とか70人とかそんな大規模の??

・東
そう。でも私が誰一人知らないんで、ダンボさんがヘルプを出してくださって。AUGMの人とも繋いでくださったし、みんなに助けてもらって、幹事できたんです。
それがご縁で、AUGMの人達とも知り合えたし、今でも仲良くさせていただいてます。
さらにAUGMの人達だけではなくて、天六のディーボックスで集っていた方々もいっぱいいらっしゃってて「あれ、なんで東くんがここにいるの?」みたいに、ディーボックス、AUGM、それまで私がお世話になっていた人たちの輪が、ここで一気にガシャンと繋がったんです。

・松本
へえー!その方々が「cheero」や「RAKUNI」を広めてくださった?

・東
それは大きいと思います。もともと私の出身がWEBなんで、みんなの受け入れ態勢も、自分たちとの同じ仲間が新商品出した、みたいな感じであたたかく受け入れてくださって。東京でWEBデザイナーのフリーランスとして初めて活動した時も、それまでのおつきあいが下地にあったので、スッとWEBの世界に入れたんですよね。

・松本
なるほどー。そこが有る・無しで全然違いますね。

・東
はい、きっと全然違ってましたね。ガジェットを扱いだした瞬間は、本当にみなさんに支えられたし、応援していただいた。
ダンボさんが広げてくれた世界から、自分でさらに開拓しているうちに、気づいたらすごく業界のお友達が増えていたっていう感じです。
ダンボさんがいなかったら、今は無いかなあって、ホントに思っています。
だから今、ある程度自分にいろんなネットワークが増えてきたので、
今度は還元しようかな、できたらいいな、と思っています。
自分がこれまで仲間に貰った分を、周りに多少なりお返ししたり、繋いだりしていきたいですね。

 

好きな人と好きなことをする。
そして好きな人と一緒に死ぬ、
そんな人生にしたい。

IMGP1034mini
・松本
言葉にするのちょっとこそばゆいかもしれないですけど、
どんな人生にしたいですか?

・東
どんな人生?うーん…。
自分の好きな人たちと楽しく生きて、最後「ああ楽しかった」って言いながら、(おおつねさんを指差しながら)一緒に死ぬ、みたいな…。
やりたいことは出来るだけのお金は欲しいけど、別にお金を儲けたいとかではなくて、やりたい時にストッパーにならないくらいの稼ぎがあって、自分の取り巻く周りの人達も還元できるくらいの懐があって、目の届く範囲ではみんなちゃんと生きてるな、って認識できる状況で、私は私で好きなことして…。最後「はあ、楽しかったなあ」と言いながら死ぬ、みたいな感じがいいです。

・松本
好きなことして、好きな人と死ぬ。いいなー、いいなー。
東さんの発想とかスタンスとか、やっぱり好きです。

大きなお世話かもしれないんですけどね、私、同じ女性たちに東さんのことを勝手にお知らせしたいと思っていて。
「こんなに伸び伸びと働いて、面白いことしている人がいるんだよ、見て見て!」って。
特に「起業」とかいうワードに興味ある人に伝えたい。

・東
起業した頃って、何もわからないんでわたしも女性経営者とかが集まる会には、参加してたんですよ。
でもそういう拠り所に参加するのって、実は非常に消極的な考え方で、そこから得られるモノって、実はあまりないって思ってる人なんです。
ただ起業して右も左も分からない時に、そういう集まりがあると、非常に勇気づけられると言うか、「お互い頑張ろうね」って支えあえる効果もある。なので一概に意味が無いとも言いません。ただ、そういう類いの集いには例えば半年だけ参加させてもらって、卒業していくっていうスタイルが、良い参加の仕方じゃないかな、って。

・松本
変に長居しても、何も得られない、と。人脈というか、おつきあいを広げるのは大事なんですが、ひとつ間違うと馴れ合いになりそうですよね。
でも、本当はただ自分の行きたい方向に、うまく進めないだけで、とりあえず人と繋がっとこか、みたいな人も多いと思う。

・東
最初はどんどん参加した方がいいと思いますよ、片っ端からね。参加して、合う・合わないを、自分の気持ちがいいか悪いかで判断していくことが大事かな。心が気持ち良くないものは参加するの辞めて、ね?気持ちの流れに逆らわずに。

一番マズいと思うのは、「ここにいたら、おいしいことが有るかも知れない」っていう気持ち。それが一番まずくって、雑念のかたまりでしかない。そう思ってる間はおいしいことはぜったい降りて来ない。20代とかにやるじゃないですか、そういう交流会への参加の仕方。

・松本
めっちゃわかります、それ。めっちゃわかります(笑。年を重ねていくぶん、若い頃との動き方も変わってしかりですよね。
あー、やっぱり面白かったです。また東さんに会いにきたいです。

・東
ありがとうございます(笑。




編集後記

新しいことを始めるのって、年を重ねれば重ねるほど、いやはや難しいなあと、思うんです。確かにね、「新しいことを始めるのに、年齢なんて関係ない!」ってよく言いますけど、いざそれが自分の仕事だったり、生活に影響したりすることなら、なかなか腰が重くなりがち。社会的にベテランになればなるほど、大半の人は今まで築き上げた経験という「財産」で、乗り切りたいんじゃないかなーと思うんです。
もちろん、ひとつの世界でまっとうするのが悪、と言いたいのではなく。「新しい世界に行きたい!」と思う気持ちと、「現状の世界で無難に過ごしたい」と思う気持ち。このふたつが自分の中にある時、さあどっちを選ぶ?というお話です。

WEBの世界から物販の世界へいった東さん。「なんで新しい世界にいったんだろう?」「どうしていけたんだろう?」「なんでそんなに速いんだろう?」ずっとずっと気になっていたので今回、インタビューさせていただきました。その答えは冒頭の見出しにもした「逆らわない」という、彼女のスタイルにあったのかな、と思っています。
「やりたい!」と思う気持ちに逆らわない東さんに、私は俄然憧れます。もちろん年を重ねて、やりたい気持ちを優先出来るだけの、経験も知識もブレーンも兼ね備えた「行動力」があるからなんだけど。
それでもやっぱり「わーい!やりたい!」とニコニコして言える人って、絶対いい。だってどれだけの大人が、自分の仕事を笑顔で「やりたい!」といえるんだろうか?と、思うから。
やりたいという気持ちに逆らわないこと。それは自然に人と繋いでくれたり、自分の世界を広げたりしてくれる。私も信じたこと、やりたいことを思いっきりやって、好きな人と死のうっと。

東 知美

1976年大阪生まれ。同志社女子短期大学卒業後、大阪デザイン専門学校マルチメディア科1期生として就学。 WEBデザイナーとして制作会社勤務を経て、25歳でフリーランスのWEBデザイナーに。大阪・東京でWEBデザイン・ディレクションを手がけながら、 大阪のインキュベーション施設「ディーボックス」(現在は閉鎖)ほか、 Appleユーザー同士の地域交流グループ「AUGM」にて、多くのWEB・IT関係者と幅広い交流を深める。
2009年、WEB制作を主要事業とする株式会社トーモを設立。本業の傍ら、自身の父が代表を務める会社、ティ・アール・エイ株式会社の新規モバイルバッテリー事業において 一部製品の企画や営業、広報などを担当する。 2016年には自社ブランド「RAKUNI」を立ち上げ、“毎日の生活をかろやかに”の コンセプトのもと、物販事業を展開。主力商品のカードホルダー付きiPhoneケースは発売以来、完売した品番も多数。精力的に新作を発表し、現在に至る。